| 趣 旨 |
1. シンポジウム「歌舞伎創始の背景とその後」
地球規模で日本文化を眺める時、16世紀から17世紀への移行期は、何と魅力のある時代であろうか。時は大航海時代。黄金の国、ジパングととらえた西欧諸国の日本への関心の高まりを背景に、日本についてのキリスト教関係者の記述が確かな史料として残り、また国内の史料も豊かである。そこに浮き上がってくるのが出雲の阿国が編み出した歌舞伎踊りである。
本年、阿国が北野の社や鴨の河原で歌舞伎踊りを披露してから、四百年を迎える。この時に当たり、改めてグローバルな視点から歌舞伎草創期の状況とその後の歩みを振り返り、新しい男女共生の時代を拓くための演劇のあり方について、海外からの作家・研究者を交えて話し合うとともに、戦国時代の終焉に向かい活況を呈していた京都において、多地域からの人々が交流し、異文化と遭遇し、自由闊達な文化を創造したことを振り返り、今後の文化創造・国際交流・地域振興のありかたについて考察することとする。 |
2. ワークショップ「女が男に男が女になるとき」
阿国が世界の演劇史上ユニークな存在であるのは、女性の身で男性を演じ、一座では男性に女性を演じさせていたことにある。当時、イギリスではシェークスピアの属していた劇団では男性が女性を演じ、イタリアで台頭したオペラでは、カストラート(去勢された男性)が女性を演じていた。阿国が女院の前で初めて歌舞伎踊りを披露したという記録のある1603年(慶長8年)から400年後に当たる2003年5月はじめ、京都生涯教育研究所では(株)東映京都スタジオ等の協力を得て、かつて鴨川の河川敷であったと推察される京都市役所前で、阿国の魂迎えの野外劇を上演した。
この野外劇は、当時の資料を踏まえた上でのフィクションであるが、主役はもとより脇役も女が男になり男が女になる演技を試みた。また京都は、歌舞伎発祥の地であるばかりではなく日本映画発祥の地でもある。この野外劇は時代劇に歌舞伎風の演技を取り入れることを試みたものである。野外劇のビデオは、ジェンダー学や京都学・日本学のテキストに使用されることが可能である。 |
| 基調講演とシンポジウム講師・報告者プロフィール |
河竹登志夫
早稲田大学名誉教授、日本演劇協会会長、文化功労者。河竹黙阿弥の曾孫で歌舞伎研究の第一人者である。海外への歌舞伎紹介に務めた経験から、「歌舞伎はバロックだ」とみる一方、数多い歌舞伎の演目の中でも海外で高い評価を得るのは、人間普遍のドラマを描いたものであると鋭く指摘する。主要著書:『比較演劇学』正続(南窓社)、『河竹登志夫歌舞伎論集』(演劇出版社)他。 |
ヨリッセン・エンゲルベルト
国際日本文化研究センター客員助教授をへて京都大学助教授。ケルン大学卒。Dr.phil.。専攻:比較文化、比較文学、特に日欧交流。ポルトガル政府よりカモンイス賞受賞。主要著書:『フロイスの日本覚書』(中央公論社)、『カルレッティ氏の東洋見聞録』、『Das
Japanbild im “Traktat”(158 5)des Luis Frois』他。オペラ「阿国」(2001年、春秋座)の時代考証を担当した。 |
服部幸雄
国立劇場専門員・日本女子大学教授を経て千葉大学名誉教授。名古屋大学卒業。歌舞伎・芸能文化論専攻。歌舞伎を広い視野から多角的に把え、江戸文化史にアプローチしている。主要著書に『歌舞伎成立の研究』『歌舞伎のキーワード』『絵本・夢の江戸歌舞伎』『大いなる小屋―近世都市の祝祭空間―』『江戸歌舞伎の美意識』『市川団十郎代々』『江戸歌舞伎文化論』他。 |
芳賀徹
東京大学名誉教授。国際日本文化研究センター教授を経て京都造形芸術大学学長。専門:比較文学、近代日本比較文化史。主要著書:『与謝蕪村の小さな世界』(中央公論社)、『詩歌の森へ』(中央公論社)他。江戸の文化と人々の意識や行動を踏まえて歌舞伎の変遷を考察する。 |
米山俊直
大手前大学学長。京都大学大学院博士課程単位取得。農学博士。京都大学名誉教授。放送大学教授、日本学術会議第16期会員。専門:文化人類学、アフリカ地域研究、都市人類学、比較文明学。日本生活学会今和次郎賞、京都新聞文化賞受賞、紫綬褒章受章。著書:『私の比較文明論』『アフリカ農耕民の生活観』『祇園祭』『天神祭』『都市と祭りの人類学』『小盆地宇宙と日本文化』『同時代の人類学』など多数。比較文明論の視点から歌舞伎を考察する。 |
ダーチャ・マライーニ
イタリアの代表的な作家・劇作家。幼時、家族と日本に滞在(父は文化人類学者、フォスコ・マライーニ)。ファシズム政権に抵抗した一家は、収容所生活を余儀なくされる。帰国後、母の実家のあるシチーリアに身を寄せる。62年、処女作『ヴァカンツァ』発表。63年、『不安の季節』でフォルメントール賞受賞。90年度カンピエッロ賞受賞作『シチーリアの雅歌』は、20万部を超えるベストセラーとなった。今回、歌舞伎発祥と同時代にオペラが誕生したイタリアにおける、表現者としての女性の登場について語る。 |
ヘレン・S・パ一カー
エディンバラ大学講師。早稲田大学等に学んで英国に帰国後、日本の古典文学について教え、国際交流基金招聘研究者として再度来日。2001年7月、エディンバラにおいて開催された日本祭の21世紀日本劇場のオーガナイザーをつとめる。宝塚歌劇団における男役に関する研究、少女漫画からの翻案に関する研究にも取り組む。 |
山口清文
朝日新聞記者。早稲田大学卒。東京、名古屋、西部、北海道の各本社・支社写真部で部員、次長、部長をつとめる。現在、映像本部員。15年前から全国各地の地芝居(農村歌舞伎)取材を続け、紙面等で紹介しているが、なかでも地芝居で女性たちが演技者として活躍している姿や、女子中学生らが地域文化の学習のために歌舞伎を演じている姿などをとらえた作品が注目されている。東京写真記者協会賞ニュース部門、及び芸能部門をそれぞれ受賞。 |
冨士谷あつ子
評論家。京都生涯教育研究所所長。京都大学農学部卒。農学博士(京都大学)。60年代から女子学生問題への取り組みを契機に社会活動・文筆活動を始める。武庫川女子大学、福井県立大学に教授として招かれ定年退職。(財)京都国際文化協会理事。日本ペンクラブ国際委員会委員。日本ジェンダー学会会長。専門:生涯教育論、日本文化論、ジェンダー学。著書:『京おんなの京』『女性学入門』(編著)『日本農業の女性学』『生涯学習への出発』『京都学を学ぶ人のために』など多数。第24回読売教育賞受賞。 |
香川孝三
神戸大学大学院教授(国際協力研究科)。日本ジェンダー学会理事・事務局長。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得。専門:比較労働法。アジアボランティアセンター運営委員長。著書:『インドの労使関係と法』『我が国海外進出企業の労働問題』『ジェンダー学を学ぶ人のために』(共著)など。 |
松尾正武
日本映画監督協会会員、日本映画クラブ副会長。同志社大学卒業後、東映京都入社。松田定次、マキノ政弘監督らに師事。「新選組・燃えよ剣」「俺は用心棒」「長七郎江戸日記」「遠山の金さん」「暴れん坊将軍」シリーズなど多数の作品がある。 |