この度、舞台芸術研究センターでは、伝統的な演劇の豊かな想像力と現代演劇を結びつけるべく、<越境する伝統>をテーマに、能ジャンクション『葵上』(構成・演出:渡邊守章)の上映会およびトークを開催いたします。
能ジャンクション『葵上』は、本行通りに演じられる能の『葵上』と円地文子訳『源氏物語』「葵の巻」のテクスト、湯浅譲二のミュージック・コンクレート(『葵上』の謡と囃子を電子音でアレンジした楽曲)の出会いによって生み出された作品で、1987年東京・渋谷のパルコPART-3で初演されましたが、野村武司(現在の萬斎)の能・狂言以外での初舞台作品として、その<時分の花>の美しさが大評判となりました。
舞台は、事故を起こしたレーサーの青年が、死の直前、年上の女性との禁じられた恋の回想を見る、という設定で展開します。レオタードに緋色の長襦袢をまとった野村武司(萬斎)に、泥眼の面をつけ唐織の装束を身に纏った観世榮夫演じるシテ(六条御息所の怨霊)が、闇から現れ取り憑く。青年は「葵の巻」を抑揚のないモノトーンな口調で語り始め、怨念がその肌に官能の匂いとして散りばめられていく・・・。
伝統的な舞台作品を構成するテクスト、音楽、身体性などを一度解体し、その仕掛けを露呈させるとともに、舞台上でそれらの新たな関係を遊戯的に再構築した<能ジャンクション>。舞台とその映像についても、刺激的な問題を提示している作品です。 今回は、渡邊守章さんを講師に招き、3月にstudio21で上演される『當麻』と合わせ、能ジャンクションの可能性についてお話をうかがいます。
講師:渡邊守章(演出家、京都造形芸術大学客員教授)
聞き手:森山直人(京都造形芸術大学准教授)