世界がある避けられない運動にとらわれていることの悲しみ
――「美には傷以外の起源はない」(ジャン・ジュネ)
舞台芸術研究センター主催プロジェクト「ジャン・ジュネのテクストに基づくダンス公演『恋する虜』」(2008年3月/京都芸術劇場春秋座)の関連シンポジウムとして「問いとしての<パレスチナ>」を開催いたします。
ジュネの遺した作品群とその特異な生の軌跡を読み解きながら、それを現在の私たちを取り巻く状況との関係においてダンス作品へと結実させていくプロセスの中で、今回は特にジュネとパレスチナの関わりに着目します。パレスチナ情勢も刻々と変化している現在、パレスチナ滞在期の追憶を中心とするジュネの遺作『恋する虜』を私たちはどう読むことができるのか。そもそも何がジュネをパレスチナへと駆り立て、パレスチナ人の傍らで過ごした時間はジュネに何をもたらしたのか。ジュネの問いは生々しく、今に至っていると思います。
シンポジウムでは、私たち自身がパレスチナに触れ、そこから派生する問題の拡がりを知るために、まず第一部でパレスチナ情勢に精通する岡真理さんと、異なる価値観を持つ他者との関わりを真摯に表現する美術作家・高嶺格さんを招き、パレスチナをめぐる表現の現在を問い、第二部ではフランス文学の研究者・宇野邦一さん等を交え、ジュネの言葉を手がかりに、現代における「政治」と「芸術」の関係を考えます。
また、当日シンポジウム前には、パレスチナ人監督ミシェル・クレイフィとユダヤ人監督エイアル・シヴァンが共同制作したドキュメンタリー映画『ルート181』を学内の別会場にて上映します。
【パネリスト・プロフィール】
岡真理(おか・まり)
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。現代アラブ文学・パレスチナ問題・第三世界フェミニズム思想専攻。著書に『棗椰子の木陰で−第三世界フェミニズムと文学の力』など。雑誌『前夜』に、パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーの作品を翻訳中。
高嶺格(たかみね・ただす)
美術作家。作品はビデオ、インスタレーションから書道や陶器まで様々な形態に渡るが、舞台のコラボレーションや演出作品も多く、ジャンル横断的な活動が注目を集めている。2001年に半年間、イスラエルに滞在。
宇野邦一(うの・くにいち)
1948年生まれ。立教大学教授。フランス文学・思想専攻。主な著書に『ジャン・ジュネ--身振りと内在平面』、『アルトー思考と身体』、『<単なる生>の哲学』、訳書にドゥルーズ『フーコー』、べケット『伴侶』など。