|
舞台芸術研究センターでは、ダンサー・コレオグラファーで主任研究員(本学教授)の山田せつ子を中心に、フランスの作家ジャン・ジュネ(1910−86)の後期作品に基づくダンス公演『恋する虜』に向けて、「創作」と「研究」が緊密に結合した共同プロジェクトを展開しています。単に物語を素材や口実にしてダンス作品をつくるのではなく、ジュネの言葉からどんな身体性や思考の運動を読み取ることができるのか、そしてそれを現在の私たちが置かれている社会的、歴史的、政治的な状況へとどう結びつけていくことができるのかを実践的に模索し、アクチュアルな考察と問いかけを通して、現代におけるダンス表現の根源的な可能性を見出していこうとする試みです。
今回2007年3月には、約一年にわたり取り組んできた成果をこのプロジェクトの中間発表として、約1週間かけて様々なプログラムを発表します。(1)ダンスのプレゼンテーション、(2)映像・美術とダンスの公開実験、(3)ワークショップの公開、(4)トークセッション など、これまで辿って来たプロセスにそのまま観客の皆さんに触れて頂き、更にこのプロジェクトを加速させ、来年度にはダンス作品として発表することを目指しています。
 |
2006年11月5日 公開セミナーより 撮影:清水俊洋
|
 |
2007年3月15日「ジュネに応答する8日間」より
撮影:清水俊洋 |
水底を手探りで探し求めていくようなこのプロジェクトにも、ときに恩寵のような瞬間があり、ほんのささやかな発見に目を輝かせ、糸を手繰るようにジュネの輪郭と向かいあって来ました。様々な人々との出会いが生まれ、羊歯が伸びるようにダンス、映像、美術、光、音楽そして言葉の往来がはじまりました。11月の公開セミナーにも多くのご意見を頂戴し励みになりました。ジュネがジャコメッテイの粗末なアトリエで、揺れるパレスチナの土地で見つめたものに応答できる身体がどう浮かび上がってくるか、3月皆様と共有する場にむけて作業を進めています。
― 山田せつ子
ジャン・ジュネ(1910.12.19〜1986.4.15)
パリで生まれ、7ヶ月で母親に遺棄される。父は不詳。国境を越えて転々と放浪しながら窃盗などの罪を重ね、在監中に詩集『死刑囚』(1942)を出版。以後『花のノートルダム』『薔薇の奇蹟』『葬儀』『泥棒日記』など、犯罪者や同性愛者の立場を公然と引き受けた小説群により、コクトー、サルトルらの称賛を受け作家としての名声を獲得。6年間の沈黙の後、1955年から戯曲『黒んぼたち』『バルコン』『屏風』などを発表し、その後の前衛劇の展開に大きな影響を与える。1968年以降はアメリカ黒人解放闘争、パレスチナ解放闘争などに加担しながら特異な政治的ルポタージュを発表。パレスチナ滞在期の追憶を中心とする長編回想記『恋する虜』が絶筆となった。
|