experiment
音楽企画
大友良英 作曲 [Anode]コンサート
Anodeは大友良英が現在進行しているプロジェクトの中でも、最も実験的な作品のひとつです。2001年にアメリカのTZADIKからCDがリリースされ、2002年8月に札幌市で全曲演奏の世界初演が行われました。
―出 演―
大友良英 (composition, electric guitar)Otomo Yoshihide
杉本 拓 (electric guitar)Sugimoto Taku
西 陽子

(prepared 17-string koto)Nishi Yoko

秋山徹次 (turntables without records, contact microphone)Akiyama Tetuzi
Sachiko M (sine waves, contact microphone)Sachiko M
芳垣安洋 (percussion, drums)Yoshigaki Yasuhiro
一楽儀光 (percussion, drums)Ichiraku Yoshimitsu
植村昌弘 (percussion, drums)Uemura Masahiro
イトケン (percussion, drums)Itoken
高良久美子 (vibraphone, percussion)Takara Kumiko
恵良真理 (percussion, crotails)Era Mari

日時 2003年12月10日(水) 19:00開演 (終演予定21:00)
会場 京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)075-791-8240
18:00受付開始 18:30開場
料金

[一般]前売3,000円 当日3,500円
[学生]前売2,500円 当日3,000円

予約開始日   9月24日
企画   F.M.N. sound factory
[主催・予約・お問い合わせ]
京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター 〒606-8271 京都市左京区北白川瓜生山2−116
Tel.075-791-8240 Fax.075-791-9438 E-mail info@k-pac.org
大友良英 作曲 [Anode]とは……

【Anode】=アノード は、幾つかの演奏上の制限をインプロヴァイザー達に設けることによって作られた作品です。従来の作曲のように、ストラクチャーについては何分間演奏するかという制限以外は一切の指定はありません。したがって、ここでいう作曲とは、即興演奏に制限をつけることを指します。

これらの制限はインプロヴァイザー達の自由を奪ったり、耳を塞ぐのが目的ではありません。逆にそうした制限の中で開かれてくる新しい音の聞こえ方が即興演奏に何をもたらすか、ということにこの作品の根幹があるといえます。

楽曲を構成する3つのシリーズには、それぞれ異なるルールが設定されていますが、全曲に共通する設定は以下の3つです。
a) 他人の音に反応してはいけない
b) 起承転結をつけてはいけない
c) 普段使っている音楽的な語法やリズム、メロディ、クリシェを使ってはいけない

【Anode】はPAシステムを使わず、11人の演奏者が平場に散らばって演奏をおこない、観客は演奏者の中を動き回りながら音を体験します。また、観客の移動により音が変化することが期待されます。一般的なコンサートとは異なり、演奏者も観客も含めて、空間全体が楽器となり、様々な方向から聴こえてくる遠近感ある多様な音色の響きあいを実際の空間の中で経験します。PAシステムを通さない可聴範囲を超えた音群が相互に共鳴したり反響したり、化学反応のように変調したりしながら刻々と様相を変えていくさまに耳を開いていく快感を覚えます。

通常の<音楽>的ストーリーを楽しむのではなく、<音>そのものの肌触りから生まれるものに着目した作品です。<音>の響きだけに焦点を当てているという点で、音楽ファンではない方々にも分かりやすく、楽しめる余地の多くある作品です。
大友良英(おおともよしひで)プロフィール
http://www.japanimprov.com/yotomo/yotomoj/index.html
1959年生まれ。ターンテーブル奏者/ギタリスト/作曲家として、日本はもとより世界各地でのコンサートやレコーディング等、常にインディペンデントなスタンスで活動し、多くのアーティストとコラボレーションを行っている。また、映画音楽家としても、中国/香港映画を中心に数多くのサウンドトラックを手がけ、ベルリンをはじめとした多くの映画祭で受賞、高い評価を得ている。近年はポスト・サンプリング指向を強め、「Ground-Zero」のプロジェクトに代表されるようなノイズやカット・アップ等を多用した大音量の作品から、音響の発生そのものに焦点をあてたスポンティニアスな作品へと、ドラスティックに作風を変化させている。Sachiko Mと結成した電子音響系プロジェクト「Filament」で徹底した脱メモリー音楽を指向する一方で、伝統楽器とエレクトロニクスによるアンサンブル「Cathode」や、60年代のジャズを今日的な視点でよみがえらせる「大友良英 New Jazz Quintet」等をスタート。他にも邦楽器の為の作品の作曲、多方面でのリミックス、プロデュース・ワーク等、多忙を極める。

CD『Anode』(Tzadik) ライナー・ノート原文


アノードは、幾つかの演奏上の制限をインプロヴァイザー達に設けることによって作られた作品です。従来の作曲のように、ストラクチャーについては何分間演奏するかという制限以外は一切の指定をしませんでした。したがって、ここでいう作曲とは即興演奏に制限をつけることを指します。

全曲に共通する設定は以下の3つ。
a) 他人の音に反応してはいけない
b) 起承転結をつけてはいけない
c) 普段使っている音楽的な語法やリズム、メロディ、クリシェを使ってはいけない

これをもとにAnode 1〜3それぞれにさらに異なる制限を設けました。例えば、Anode 1では打楽器奏者に対しては「大きな音量で、余韻が聞こえる前に次の音を出す」という指示を、Anode 2では「自分の出した音の余韻がなくなってから次のアクションを考える」、「毎回出す音は一打のみで、かつ音の種類や音色、音量を毎回変えること」というわずか2つだけの指示を出しています。また音色と音量については、それぞれの楽曲毎に、演奏者と相談のうえ、やはり使える音色と音量についての制限を設けています。

他人の音に反応してはいけない…、これが全作品において最も重要なキー・ワードになっています。ただし、ここが重要なのですが、それらの出来事は、他の演奏者の音に耳をふさぐことによってなされるのではなく、大人数の演奏家が同じ場所で音を出す中でなされなければならないのです。この録音ではわたしがいつも使うGOK Soundの一番大きな部屋に全ミュージシャンを集め、ヘッドホンやひとりひとりに配給されるモニターを使わずに、なるべくライヴに近いアコースティックな状態で録音されています。遠くに配置した楽器は遠くに聴こえ、小さい音は大きな音に埋もれる…という、すぐれたPAや録音技術が発明されて以降は絶滅しつつある音楽環境をあえて作って録音しました。
反応を禁止したり、モニターを使わなかったりといった、演奏上や録音環境上の様々な制限は、インプロヴァイザー達の自由を奪ったり耳を塞ぐのが目的ではなく、逆にそうした制限の中で開かれてくる新しい音の聴こえかたが、即興演奏に何をもたらすのかということを見てみることこそがこの作品の根幹とも言えるのです。またその他の設定や制限についても同じように、それによってあぶり出される目的があるのです。

前作の『Cathode』が音の聴き方の設定を作曲によって変える試みだとすれば、今回は即興演奏に制限を設けることによって演奏者の耳の設定を変更する試みということもできるでしょう。また、わたしにとっては今だ大きな存在の高柳昌行の音楽が何であったのかを考える機会を、この作品が作ってくれたのは予期せぬ大きな成果でした。
今回このプロジェクトをやる機会を作ってくださったTzadik、特にJohn Zorn氏に心から感謝します。



以下は実際にはライナー・ノートに載せなかった下書き部分です。

『Cathode』が60年代の現代音楽へのオマージュだったのに対して、本作は1970年代以降の東京のアンダーグラウンド・ミュージック、特にノイズと即興へのオマージュになっている。しかし、今回参加していただいたミュージシャンには、そのことは一切伝えずに、アプローチを限定するやり方で演奏してもらった。指定したのは、音符や音形、あるいはどういう世界をつくるかではなく、あくまでも作業の手順のみで、結果的には即興の自由を奪うことに焦点をあてた。従ってここでの作曲とは、演奏の限定を意味する。作業のように物音を出す。耳をそば立てるが反応はしない。演奏者の内面が何かを産むのではなく、作業の手順から生まれる何かと、にじみ出てしまう何か。
わたしのほとんど全ての作曲がそうであるように、本作も参加していただいた演奏家の即興的な演奏能力抜きには生まれ得ない。再現性のある作曲ではないし、誰が演奏するのかを想定して構想されているからだ。その意味で、わたしの作品は作曲と即興という二分法とは別のベクトルにあると思っている。参加していただいた演奏家、そしてエンジニアの近藤祥昭さんに、心から感謝したい。
大友良英
2001年9月 東京
京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター
     〒606-8271 京都市左京区北白川瓜生山2-116 tel.075-791-8240 fax.075-791-9438 e-mail info@k-pac.org
© Copyright 2001 Kyoto Performing Arts Center allright reserved