experiment
 
公演名 京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター主催
Takashi Ito Exhibition
恋する虜-The Dead Dance
日時

2009年1月17日(土)13:00〜20:00
        18日(日)12:00〜17:00 ※時間内随時入場可
【関連企画】
17日15:30〜 劇場ホワイエにて関連トークを開催
出演 伊藤高志 他

会場 京都芸術劇場 春秋座
料金

無料

主催・お問合せ 京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター 
Tel: 075-791-9437

ジャン・ジュネの描く世界というのは、常識を覆すところがあって、例えば醜いもの、汚いものを崩し、どれだけ汚辱に犯されたものが神聖で美しいかを見せているんです。だから価値観の固まっている人が作品に触れると混乱し、自分には無い視点の新しさを発見することができる。ショックと同時に、そういう見方があるのかと感動し、作品を読むことで自分が変化していくことに驚くんです。
今回、そういう世界を音響と映像で作りだして、観客を不安定な世界に引き込みたいと思っています。
2001年にダンサーの山田せつ子さん(本学舞台芸術学科教授)と二人で『DOUBLE/分身』という映像とダンスのコラボを企画したのですが、これはダンスをするせつ子さんの映像を空間に投影し、そこでせつ子さんがソロで踊り、実体と映像が関係し合うというもので、実体と虚像が同居する、この舞台を客席から見ていたら、だんだんどちらが本物か分からなくなってくる、そんな境界線上の美しさと気持ち悪さがあったんです。この時の舞台が私の中で確信となり、ジュネの作品の側面も、そういうところにあると思うので、肉体と映像の関係が崩れるこの世界を、ジュネの企画でやりたいと思ったのです。
例えば善も悪もその境界線があるから、意味がはっきりしてくる。境界線が曖昧だと不安定で混乱するんです。境界というものは、常に混乱と不安を掻き立てるものだと思うんですよ。ジュネの作品には、何か境界を崩してしまうような世界があって、だから読み手が不安定になるんです。でも、そんなふうに自分が不安定な気分になる状況を自分で発見するって面白いなと思うんです。そんな発見をこの作品を見ることで感じてもらえたらと思うのです。
映画もそうだけれど、映像って虚像だけど実態のように見えますよね。映像というメディアは幽霊的で、存在しているように見せてしまうという大きな力がある。本質的に幽霊的に見せる力があって、今回はその力を最大限に使って活かしたいですね。
例えば等身大の映像が幽霊のように見えたり、居もしないダンサーがいたり、ダンサーとダンサーの映像が混ざり合ったり、肉体と虚像が混ざり合ったりする。そんな境界が消える気持ち悪さを表現したいです。映像で取り囲まれた中で、境界が曖昧な不気味さとか恐さを伝えるということは、ある種挑戦だと思います。
曖昧な境界線に立つことで、価値観が揺らぎ始める気持ち悪さに観客を連れていきたいですね。気持ち悪いけれど、なんか気持ちいいという世界を作りたいです。

【京都造形芸術大学 映画学科教授 伊藤高志】


現実と幻影、生者と死者の境界を侵犯する、めくるめく映像の魔術

  京都造形芸術大学舞台芸術研究センターでは、創造現場と研究活動を緊密に連携させながら、ジャン・ジュネのテクストに基づいてダンス作品を創作するプロジェクトを2年間にわたって展開し、公開リハーサルやパレスチナ問題をめぐるシンポジウム、上映会など、多様な関連イヴェントの実施を経て、2008年3月にひとまずの総括となるダンス公演『恋する虜-ジュネ/身体/イマージュ』を開催した。本展は、日本を代表する実験映画作家として知られ、公演に映像スタッフとして参加した伊藤高志によるその〈映像インスタレーション版〉であり、「イマージュ」という主題を通してダンス作品を再検証する試みである。

 芸術作品は数えきれないほどの死者たちに捧げられているのだとジュネは言い、また、現代の都市で劇場が建設されうる唯一の場所こそ墓地なのだとも述べている。ダンス作品『恋する虜-ジュネ/身体/イマージュ』も、さまざまな「死者たち」を召喚するものとして上演された。そしてそこではダンサーたちの身体と映像の関わりのなかで、伊藤高志の作品に通底する「不在」「亡霊」「分身」「倒錯」などのテーマが、ジュネの言葉と響きあいつつ浮かび上がっていたはずである。今回の映像インスタレーション版では、ダンス公演が行われた同じ京都芸術劇場・春秋座の空間を舞台に、文字どおりイマージュとなった「死者たち」だけが登場し、踊ることになる。

 インスタレーションの素材には公演に出演したダンサーの映像が用いられるが、もちろん単なる再演でも再現でもなく、いわばそれ自体がダンス作品の「分身」であり「亡霊」である。実在と不在、現実と幻影、エロスとタナトスが、ジュネの言葉に倣えば「手袋のように裏返る」ことによって、ダンスはどのように現れ、劇場はどんな空間へと変貌することになるだろうか。観客を「死者たち」の国へと誘いながら、今日における映像と身体の関係を改めて問い直してみたい。

【舞台芸術研究センター 主任研究員 八角聡仁】

映像:伊藤高志 
サウンド:稲垣貴士 
音響:大久保歩(KWAT)
映像技術:新垣亘洋 脇原大輔
宣伝美術:五十川あき 

【伊藤高志】(ITO Takashi)
'83年九州芸術工科大学画像設計学科卒業。大学在学中、松本俊夫のもとで実験映画を学び本格的に映画制作を開始。卒業制作で16ミリ映画『SPACY』 ('81)を発表。国内外で高く評価され1995年にフランス・クレルモンフェラン短編映画祭にて“短編映画の1世紀”の 100本の中の1本に選出される(パリ、ポンピドーセンター所蔵)。'84年より映画配給会社シネセゾンに勤務する中、毎年1本のペースで実験映画を発表。'93年より京都芸術短期大学の教師となり『ZONE』('95)『モノクロームヘッド』 ('97)などの自己の内面を掘り下げる短編映画を制作。また石井聰互や林海象の劇映画における特撮、劇作家如月小春や川村毅、美術家森村泰昌、ダンサーの山田せつ子や伊藤キム、岩下徹といった他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも積極的に行っている。現在、京都造形芸術大学映画学科教授。

京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター
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