現実と幻影、生者と死者の境界を侵犯する、めくるめく映像の魔術
京都造形芸術大学舞台芸術研究センターでは、創造現場と研究活動を緊密に連携させながら、ジャン・ジュネのテクストに基づいてダンス作品を創作するプロジェクトを2年間にわたって展開し、公開リハーサルやパレスチナ問題をめぐるシンポジウム、上映会など、多様な関連イヴェントの実施を経て、2008年3月にひとまずの総括となるダンス公演『恋する虜-ジュネ/身体/イマージュ』を開催した。本展は、日本を代表する実験映画作家として知られ、公演に映像スタッフとして参加した伊藤高志によるその〈映像インスタレーション版〉であり、「イマージュ」という主題を通してダンス作品を再検証する試みである。
芸術作品は数えきれないほどの死者たちに捧げられているのだとジュネは言い、また、現代の都市で劇場が建設されうる唯一の場所こそ墓地なのだとも述べている。ダンス作品『恋する虜-ジュネ/身体/イマージュ』も、さまざまな「死者たち」を召喚するものとして上演された。そしてそこではダンサーたちの身体と映像の関わりのなかで、伊藤高志の作品に通底する「不在」「亡霊」「分身」「倒錯」などのテーマが、ジュネの言葉と響きあいつつ浮かび上がっていたはずである。今回の映像インスタレーション版では、ダンス公演が行われた同じ京都芸術劇場・春秋座の空間を舞台に、文字どおりイマージュとなった「死者たち」だけが登場し、踊ることになる。
インスタレーションの素材には公演に出演したダンサーの映像が用いられるが、もちろん単なる再演でも再現でもなく、いわばそれ自体がダンス作品の「分身」であり「亡霊」である。実在と不在、現実と幻影、エロスとタナトスが、ジュネの言葉に倣えば「手袋のように裏返る」ことによって、ダンスはどのように現れ、劇場はどんな空間へと変貌することになるだろうか。観客を「死者たち」の国へと誘いながら、今日における映像と身体の関係を改めて問い直してみたい。 |