[出演]
野村萬斎 /
後藤加代 /
野村万作(人間国宝)7・8日特別出演 /
平栗あつみ /
渡邊守章
田原正治 / 石井英明 / 吉見一豊 / 瑞木健太郎 / 小田豊 / 錦部高寿
ポール・クローデル(1868−1955)は、20世紀フランスの最も重要な作家・劇詩人で外交官でもあり、日本には大正年間に5年近く大使として滞在し、日本の文化を深く愛した。滞日中に完成する長編戯曲『繻子の靴』は、詩人が生涯の集大成と考えた壮大な規模の作品で、16世紀スペインを中心に、新旧両大陸に展開される若い貴婦人ドニャ・プルエーズと新大陸の征服者ドン・ロドリッグとの地上では叶わぬ恋を主軸とする。プルエーズに地上における不可能な政治的使命を託す夫ドン・ペラージュ、彼女に邪な恋を抱く背教徒ドン・カミーユという悲劇的な四角関係と対をなすようにして、ドニャ・ミュージークとナポリの副王の幻想的な恋物語が展開する。これらの主筋に絡む道化芝居の千変万化。この「四日間のスペイン芝居」は、ワーグナーの『ニーベルンクの指輪』四部作を凌駕する世界大演劇であり、西洋と東洋の、古典と前衛の演劇言語が絢燗たる火花を散らす、まさにグローバルな祝祭演劇である。
クローデルの戯曲は、長短入り混じる独特の自由詩形で書かれており、まずその言葉の力を、俳優の声=身体において捉えることが不可欠である。今回の《朗読のオラトリオ》は、単なるリーディングではなく、言葉における「オラトリオ」をモデルに、《言葉の姿》が、その強度において、鳴り響き立ち現れるようにする実験である。今回は、詩人の没後50周年を記念して行われ、幸いにも好評であった「全曲版」を踏まえつつ、舞台上演を視野にいれたウ゛ァージョンを作るための作業である。
萬斎君とは、能狂言の舞台を別にすれば、1990年の東京グローブ座『ハムレット』以来のことであり、御尊父万作さんとは五十年来のお付き合いだが、これも能狂言の仕事を別にすれば、1975年の「冥の会」におけるセネカ『メーデーア』から初めての舞台である。後藤加代は、今年3月に京都造形芸術大学春秋座studio21における空中庭園・能ジャンクション『當麻―折口信夫「死者の書」による』で、その存在感と強度に貫かれた《語り》が人々を魅了した。
これらの《声》と《言葉》の劇的な出会いに、賭けられているものは大きい。 |