写真や映画などの映像テクノロジーと人類学はいずれも19世紀に誕生し、互いに深く関係しながら発達してきました。それらが一方で植民地支配に加担し、人種や民族性に関わる偏見や差別を助長してきたことへの反省や批判もすでに久しく行われています。
しかし、支配や収奪を離れた「観察する者」と「観察される者」の関係がどうあるべきなのか、どのような映像表現や人類学が「正しい」ものであるのかは、必ずしも簡単ではありません。この上映会では、こうした根源的な批判や議論をふまえた上で、広く民族学映画の古典から若手作家の注目作までを取り上げ、映像人類学の新たな広がりを展望し、人間の経験としての映像の本質や可能性を多角的に探っていきます。
去る9月4日に逝去された佐藤真監督と企画してきたプログラムを引継ぎ、公開の機会の少ない貴重な作品を含む24タイトルの上映に加え、作家・研究者によるレクチャーを開催します。
| ●12月8 日(土) |
| 11:00〜 |
市岡ゼミ『信仰の灯し火−古要舞・現代に生きる神と人のかたち』(43分) |
| 13:00〜 |
市岡康子『女の島トロブリアンド』(50分) |
| 14:00〜 |
市岡康子『ジェイ・ヘム・リュウ−カンボジアの神がかり』(50分) |
| 15:00〜 |
◇レクチャー/市岡康子(60分) |
| 16:30〜 |
大森康宏『私の人生 ジプシー・マヌーシュ』(60分) |
| 17:50〜 |
大森康宏『津軽のカミサマ』(93分) |
| 19:30〜 |
◇レクチャー/大森康宏(60分) |
| ●12月9 日(日) |
| 10:00〜 |
岩谷彩子『ギリシャ−歌謡とロムの息づく国』(25分) |
| 10:30〜 |
分藤大翼『Wo a belle−もりのなか−』(30分) |
| 11:00〜 |
川瀬慈『ラリベロッチ 終わりなき祝福に生きる』(25分) |
| 11:30〜 |
新井一寛『エジプトのスーフィー教団−若きシャイフと神への熱情』(30分) |
| 13:00〜 |
北村皆雄 他『海南小記序説・アカマタの歌−西表島・古見−』(83分) |
| 14:40〜 |
北村皆雄『見世物小屋−旅の芸人・人間ポンプ一座』(119分) |
| 17:00〜 |
北村皆雄『修験−羽黒山・秋の峰』(115分) |
| 19:00〜 |
◇シンポジウム「映像人類学の新しい地平」
北村皆雄+新井一寛+川瀬慈+北小路隆志+八角聡仁(90分) |
| ●12月22日(土) |
| 10:00〜 |
アオレイオス・ソリト『神聖なる真実の儀式』(120分) |
| 13:00〜 |
野田真吉『冬の夜の神々の宴−遠山の霜月祭』(45分) |
| 14:00〜 |
野田真吉『生者と死者のかよい路−新野の盆おどり・神送りの行事』(36分) |
| 14:50〜 |
リュミエール映画・日本編(29分) |
| 15:40〜 |
内田順子+鈴木由紀『AINU Past and Present』(102分) |
| 17:30〜 |
◇レクチャー/内田順子(60分) |
| 18:50〜 |
ニール・ゴードン・マンロー(オリンピア映画社改編版)
『イヨマンデ−秘境と叙情の大地で』(29分) |
| 19:30〜 |
ニール・ゴードン・マンロー(英国国立映画TVアーカイブス保存版)
『カムイ・イヨマンデ』(53分) |
| ●12月23日(日) |
| 10:00〜 |
トリン・T・ミンハ『ルアッサンブラージュ』(40分) |
| 11:00〜 |
ジャン・ルーシュ『人間ピラミッド』(88分) |
| 13:30〜 |
ビクター・マサエスヴァ『イマジニング・インディアン』(79分) |
| 15:00〜 |
サミール『忘却のバグダッド』(116分) |
| 17:30〜 |
クリス・マルケル『不思議なクミコ』(54分) |
| 18:30〜 |
◇シンポジウム「映像と身体のポリティクス」
北小路隆志+八角聡仁+森山直人(90分) |
レクチャー講師プロフィール
市岡康子(いちおか・やすこ)
東京都立大学卒業後、1962年に日本テレビ入社。72年、日本映像記録センターの設立に参加。66年から90年まで『すばらしい世界旅行』のディレクター、プロデューサーとして、アジア太平洋を中心に各民族固有の生活と文化を民族誌的な視点から記録。著書『KULA−貝の首飾りを探して南海をゆく』(コモンズ)。元立命館アジア太平洋大学教授。
大森康宏(おおもり・やすひろ)
立命館大学映像学部教授、学部長。国立民族学博物館名誉教授。専門は映像人類学(民族誌映画)。1943年東京生まれ。立教大学経済学部卒業後、フランスでジャン・ルーシュらに師事。パリ第10ソルボンヌ大学民族学部博士課程修了、民族学博士号取得。映像作家として、1995年『津軽のカミサマ』フランスパリ第14回民族誌映画大会ナヌーク賞(グランプリ)受賞等を含む50本あまりに及ぶ作品が国際的に高い評価を得る。編著に『映像文化』(ドメス出版)他。
北村皆雄(きたむら・みなお)
映像作家、ヴィジュアルフォークロア代表。1942年生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。78年、宮田登、野田真吉らとともに「日本映像民俗学の会」を設立。インド、ネパール、チベット、中国、韓国、沖縄などアジアを中心に映像民俗学の分野を開拓し、数多くの作品を手掛ける。編著『見世物小屋の文化誌』『千年の修験』(新宿書房)他。
内田順子(うちだ・じゅんこ)
国立歴史民俗博物館民俗研究系准教授。専門は音楽民俗学。1967年生まれ。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。著書に『宮古島狩俣の神歌−その継承と創成』(思文閣出版)。
新井一寛(あらい・かずひろ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程。1975年生まれ。編著に『見る、撮る、魅せるアジア・アフリカ!』(新宿書房)。
川瀬慈(かわせ・いつし)
日本学術振興会特別研究員。2001年よりエチオピア音楽の映像記録を開始し、5本のドキュメンタリー映画を制作。『Room 11, Ethiopia Hotel』(2006年)は、各国の映画祭で高い評価を得る。
北小路隆志(きたこうじ・たかし)
映画批評家、京都造形芸術大学映画学科准教授。1962年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。著書に『王家衛的恋愛』(INFASパブリケーションズ)、共著に『映画の政治学』(青弓社)、編著に『〈社会派シネマ〉の戦い方』(フィルムアート社)他。
八角聡仁(やすみ・あきひと)
批評家、京都造形芸術大学舞台芸術研究センター教授。映像論、身体論、演劇論。1963年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編著『現代写真のリアリティ』(角川学芸出版)他。
森山直人(もりやま・なおと)
演劇批評家、京都造形芸術大学舞台芸術学科准教授。現代演劇・表象文化論。1968年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得退学。